国内企業のマーケティング部署設置率(2018年5月)
日本国内ではマーケティングが遅れており、マーケティング組織すら設置していない企業が多いとも言われますが、本当でしょうか。
組織の設置率は3%程度じゃないか?5%はあるだろうなど噂の域を超えないため、人事情報を公開している企業を全て調査し、集計しましたので報告します。
人事情報を公開している企業5,234社において、「マーケティング」のキーワードを含む部署名がある会社は614社、国内企業のマーケティング部署設置率は11.7%という結果になりました。
上場企業だけで抽出すると3,429社中、378社、上場企業(※)のマーケティング部署設置率は11.0%です。その差は0.7ptですが、全体平均より上場企業の方が低いという結果になっています。※2018年5月31日時点での上場企業数は3,618社(JPX参照)のため94.8%をカバー。
マーケティング部署を組織化する企業属性に傾向がみられるのか、業種や資本金、売上区分で集計を行ってみました。
まず業種区分で見てみましょう。
実際の調査では企業を93業種に分けていますが、集計は19区分でグルーピングしています。母数に差があるため、上位8業種のグラフを掲載します。※情報公開数50社未満の業種は下部の表をご参照ください。
日本の製造業は遅れていると言われていましたが、思ったより高いという印象を受けます。
次に資本金で結果を見てみましょう。
資本金50億以上の大企業になると、マーケ部署設置率は20.1%になりました。この結果を低いと見るか、高いと見るかは欧米などと比較しないと分かりませんが、個人的には直近10年の動きを見てマーケティング組織を設置する企業は増えたという印象です。
次に設置率が高い資本金区分は、1千万以上3千万未満で15.4%、10億以上50億未満では7.9%、1億以上10億未満が7.3%という順です。
特に、資本金1千万以上3千万未満の企業において、部署設置率が大手に続いて高いのが印象的です。中小企業ほどマーケティングに取り組んでいる実態が数字から読み取れます。
では、業種と資本金でクロスで集計すると、どの属性条件の企業が一番設置率が高いでしょうか。
※見たい業種と資本金区分でご覧ください。横軸・縦軸は加算しても100%になりません。
興味深い結果が読み解けます。企業母数は少ないですが、電気・ガス・水道のライフライン系において、資本金が1千万以上3千万未満の会社で100%という数字が目立ちます。こちらは新エネルギー系の会社になります。電力やガスの自由化に伴いマーケティングの役目は必然、という結果ではないかと考えられます。
飲食・宿泊では母数は少ないですが25%という設置率になっています。企業を見てみるとチェーン展開している外食やホテルが含まれ、各エリアの店舗営業は全てマーケティング部門配下に設置されていることから、高い数字が出ています。
製造・機械業は平均すると16.1%でしたが、資本金50億以上の大手はグローバル展開している企業がほとんどであるため、26.1%という高い結果になっています。恐らく、欧米のマーケティングが先行している中で、日本はマーケティング部署を後から急いで立ち上げた結果が、この数字になるのではと思われます。
売上区分で集計した結果です。大手から見てみましょう。売上高500億以上の部署設置率は21.8%でした。今回の調査では上場していない企業も含まれ、売上を公開していない企業も多く、その場合は不明に分類しています。
こちらも業種×売上でクロス集計をしてみます。見たい業種と売上区分でご覧ください。
※横軸・縦軸は加算しても100%になりません。
資本金で集計した時と似たような傾向が出ました。製造・機械でいえば、売上500億以上(資本金50億以上)の大手では約3割がマーケティング部署を設置していることが分かりました。
以下からは、個人的に気になった調査です。
最近、デジタルマーケティングという言葉を使うケースが増えてきたと思いますが、部署名にデジタルが付く企業はどの程度いるのか、集計しました。調べ方はマーケティング部署がある企業の中で、デジタルマーケティング部、マーケティング本部デジタルコミュニケーション部など、「デジタル」というキーワードを使っている企業を抽出しています。
この円グラフは、マーケティング部署がある企業を母数にしていますので、人事情報を公開している全企業数5,234社を母数にすると、デジタルマーケティング部署設置率は1.03%になります。結果が54社しかないため一覧にして公開しても良いのですが、いろいろ反響が大きそうなため控えておきます。
『マーケティングとは何を意味するのか』、企業によって定義や考え方は異なります。「マーケティング部」という組織を置かずとも、マーケティング活動を行う機能として営業や事業部内のメンバーが兼任していたり、広報宣伝部門がマーケティング機能を担っていることもあるでしょう。また、マーケティング戦略やデジタル変革(DX)は企画部門や戦略部門が全社的なロードマップを描いたり、経営企画部門内などで横串連携チームや検討するためのタスクフォース、推進室が発足することがあります。
そこで、部署名に「企画」や「戦略」と名の付く企業はどの程度になるのか、追加調査を行ってみました。
※人事発表記事から「マーケティング」または「企画」または「戦略」というキーワードの出現数をカウント(重複は排除)
条件にヒットする部署は、「事業戦略」や「営業企画」、「販促企画」も含まれます。マーケティングだけでなく、企画や戦略といった部署キーワードまで含めると、設置率が54.2%と、半数以上の企業が部署を設置している結果になりました。
今回の調査は、一般的なアンケート調査による自己申告ではなく、各企業から発表された人事情報のプレスリリースをベースに集計しています。よって、一部の企業ではマーケティング部署を設置していたとしても、調査結果に含まれない可能性もあることをご承知のうえ、ご一読ください。
1.製造・機械業の大手(資本金50億以上、売上500億以上)では約3割がマーケティング部署を設置している。
2.資本金が1千万以上3千万未満の中小企業では、15.4%の企業でマーケティング部署を設置している。
3.「デジタル」専門部署を設置している企業は、全体の1%程度である。
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調査結果のグラフは、引用ルールを守り自由にご利用ください。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
※継続調査、詳細分析などを希望される企業さまは、直接お問い合わせください。
組織の設置率は3%程度じゃないか?5%はあるだろうなど噂の域を超えないため、人事情報を公開している企業を全て調査し、集計しましたので報告します。
1. 集計日 : 2018年5月23日
2. 対象データ: 人事情報を公開している企業(※2016/1/1~2018/5/20までの人事発表記事)
3. 公開企業数: 5,234社
4. 企業属性 : 法人番号をベースにした独自DB環境による属性情報付与
5. 集計方法 : 人事発表記事から「マーケティング」というキーワードを含む部門・役職をカウント(※重複は排除済)
☑ 国内企業のマーケティング部署設置率は11.7%
人事情報を公開している企業5,234社において、「マーケティング」のキーワードを含む部署名がある会社は614社、国内企業のマーケティング部署設置率は11.7%という結果になりました。
上場企業だけで抽出すると3,429社中、378社、上場企業(※)のマーケティング部署設置率は11.0%です。その差は0.7ptですが、全体平均より上場企業の方が低いという結果になっています。※2018年5月31日時点での上場企業数は3,618社(JPX参照)のため94.8%をカバー。
マーケティング部署を組織化する企業属性に傾向がみられるのか、業種や資本金、売上区分で集計を行ってみました。
まず業種区分で見てみましょう。
☑ 製造・機械業のマーケティング部署設置率は16.1%
実際の調査では企業を93業種に分けていますが、集計は19区分でグルーピングしています。母数に差があるため、上位8業種のグラフを掲載します。※情報公開数50社未満の業種は下部の表をご参照ください。
日本の製造業は遅れていると言われていましたが、思ったより高いという印象を受けます。
次に資本金で結果を見てみましょう。
☑ 資本金別のマーケティング部署設置率
資本金50億以上の大企業になると、マーケ部署設置率は20.1%になりました。この結果を低いと見るか、高いと見るかは欧米などと比較しないと分かりませんが、個人的には直近10年の動きを見てマーケティング組織を設置する企業は増えたという印象です。
次に設置率が高い資本金区分は、1千万以上3千万未満で15.4%、10億以上50億未満では7.9%、1億以上10億未満が7.3%という順です。
特に、資本金1千万以上3千万未満の企業において、部署設置率が大手に続いて高いのが印象的です。中小企業ほどマーケティングに取り組んでいる実態が数字から読み取れます。
では、業種と資本金でクロスで集計すると、どの属性条件の企業が一番設置率が高いでしょうか。
※見たい業種と資本金区分でご覧ください。横軸・縦軸は加算しても100%になりません。
興味深い結果が読み解けます。企業母数は少ないですが、電気・ガス・水道のライフライン系において、資本金が1千万以上3千万未満の会社で100%という数字が目立ちます。こちらは新エネルギー系の会社になります。電力やガスの自由化に伴いマーケティングの役目は必然、という結果ではないかと考えられます。
飲食・宿泊では母数は少ないですが25%という設置率になっています。企業を見てみるとチェーン展開している外食やホテルが含まれ、各エリアの店舗営業は全てマーケティング部門配下に設置されていることから、高い数字が出ています。
製造・機械業は平均すると16.1%でしたが、資本金50億以上の大手はグローバル展開している企業がほとんどであるため、26.1%という高い結果になっています。恐らく、欧米のマーケティングが先行している中で、日本はマーケティング部署を後から急いで立ち上げた結果が、この数字になるのではと思われます。
☑ 売上別のマーケティング部署設置率
売上区分で集計した結果です。大手から見てみましょう。売上高500億以上の部署設置率は21.8%でした。今回の調査では上場していない企業も含まれ、売上を公開していない企業も多く、その場合は不明に分類しています。
こちらも業種×売上でクロス集計をしてみます。見たい業種と売上区分でご覧ください。
※横軸・縦軸は加算しても100%になりません。
資本金で集計した時と似たような傾向が出ました。製造・機械でいえば、売上500億以上(資本金50億以上)の大手では約3割がマーケティング部署を設置していることが分かりました。
以下からは、個人的に気になった調査です。
☑ デジタルマーケティングの専門部署を設置している企業数は?
最近、デジタルマーケティングという言葉を使うケースが増えてきたと思いますが、部署名にデジタルが付く企業はどの程度いるのか、集計しました。調べ方はマーケティング部署がある企業の中で、デジタルマーケティング部、マーケティング本部デジタルコミュニケーション部など、「デジタル」というキーワードを使っている企業を抽出しています。
この円グラフは、マーケティング部署がある企業を母数にしていますので、人事情報を公開している全企業数5,234社を母数にすると、デジタルマーケティング部署設置率は1.03%になります。結果が54社しかないため一覧にして公開しても良いのですが、いろいろ反響が大きそうなため控えておきます。
☑ 「企画」や「戦略」部署も含めると国内設置率は54.2%
『マーケティングとは何を意味するのか』、企業によって定義や考え方は異なります。「マーケティング部」という組織を置かずとも、マーケティング活動を行う機能として営業や事業部内のメンバーが兼任していたり、広報宣伝部門がマーケティング機能を担っていることもあるでしょう。また、マーケティング戦略やデジタル変革(DX)は企画部門や戦略部門が全社的なロードマップを描いたり、経営企画部門内などで横串連携チームや検討するためのタスクフォース、推進室が発足することがあります。
そこで、部署名に「企画」や「戦略」と名の付く企業はどの程度になるのか、追加調査を行ってみました。
※人事発表記事から「マーケティング」または「企画」または「戦略」というキーワードの出現数をカウント(重複は排除)
条件にヒットする部署は、「事業戦略」や「営業企画」、「販促企画」も含まれます。マーケティングだけでなく、企画や戦略といった部署キーワードまで含めると、設置率が54.2%と、半数以上の企業が部署を設置している結果になりました。
☑ まとめ
今回の調査は、一般的なアンケート調査による自己申告ではなく、各企業から発表された人事情報のプレスリリースをベースに集計しています。よって、一部の企業ではマーケティング部署を設置していたとしても、調査結果に含まれない可能性もあることをご承知のうえ、ご一読ください。
1.製造・機械業の大手(資本金50億以上、売上500億以上)では約3割がマーケティング部署を設置している。
2.資本金が1千万以上3千万未満の中小企業では、15.4%の企業でマーケティング部署を設置している。
3.「デジタル」専門部署を設置している企業は、全体の1%程度である。
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調査結果のグラフは、引用ルールを守り自由にご利用ください。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました。
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