従業員満足(ES)から考える顧客満足(CS)
前回の記事では「ホスピタリティ」と「サービス」の違いと人材の関係という内容で、インナーブランディングにとって重要な要素を紹介しましたが、今回は従業員満足からのインナーブランディングと顧客満足についてのお話です。これは昨今のトレンドであるソーシャルメディアマーケティングにおいても重要な事であると考えます。
最初に結論から申し上げると「裏付けの無い顧客満足志向はリスクである」という事です。その裏付けとは何か、それこそが従業員満足であり、そこから醸成される社内の自社推奨意向、所謂インナーブランディングです。
話しを進める前に、ここでの表記にインターナル・ブランディングではなくインナーブランディングを用いている意味について解説しておきます。インナーブランディングはインターナル・ブランディングと同義ですが、その言葉から想起されるイメージの実態(インナーマッスルや体幹の様な内側を鍛えるイメージ)が社内強化という使用したい意味合いに近いため、あえてインナーブランディングとここでは言わせて頂いております。
顧客満足という言葉が色々なところで叫ばれる様になり、深夜まで営業時間を延長するスーパーなども多く存在する様になりました。それはとても便利になったなと思う反面、実際に足を運ぶと、提供される商品やサービス内容が少し低下した様な印象を受けたのを覚えています。これは顧客を囲い込もうとし、顧客の利便性向上に取り組んだ結果として失敗なのではないか、と個人的には思います。
そして宅配業界の再編で話題になった企業の「大量遅配問題」も記憶に新しく、ネットでも話題になった顧客満足失敗例ではないでしょうか。この企業ではサービスの拡大を大幅に図る一方、人員の大幅増員はなく、さらには宅配で競合する企業を吸収統合した際には物流システムもテストなしの本番だったとの事。
この失敗に関しては、以下の2点が主だった理由の様に見受けられます。
・要員の伴わないサービス拡大
・ぶっつけ本番のオペレーション変更
そして、お中元時期に生鮮食品も大量に流通する中、大量遅延という自体へと繋がってしまいました。当時ネットで「通常ならここで遅延を取り戻すべく昼夜問わずに走り回るのが本来」という意見が多く、その背景には急ぐ事もなく、遅くなった事も謝らず、箱もグシャグシャ、のしもグシャグシャ、という光景が数件目撃された事にありました。
言うまでもなく、ソーシャルメディア上でその状況は消費者によって報告され、そして拡散され、多くの批判が沸き起こる状態にまでなりました。
何故このような状態になったのか。それは、従業員に企業が提供するサービスが『誰のため』であり『どの様にあるべきなのか』が理解されていないからではないでしょうか。そして、その背景にはインナーブランディングが浸透していないというようにも考えられます。
少しだけ考えて頂きたいのですが、御社がこの企業の様な事態になった時、身を粉にする従業員がどれだけ居るでしょうか。
そういった存在が居るのであればとても素晴らしい事です。
そして、そのことには以下の様な事が言えるのではないでしょうか。
・元々そういった仕事への責任が教育された素養ある人材だった。
・企業理念の徹底がされており、その理念を遂行する為の現場意識が経営層にも従業員にもある。
後者なのであれば、尚素晴らしいことではないでしょうか。
ここで重要なことは『個々の仕事の姿勢をどの様にして前向きにしていくか』であり、そのことが業務の理解と自主性に繋がります。そして、その『前向きな姿勢』には従業員満足度が重要であると考えられます。
ここまででインナーブラディングの失敗例を基に、従業員満足度との関連性があるようにお話をしましたが、もっと具体的に従業員満足度が不十分な場合にどの様なリスクが考えられるのか。
まずは従業員について。
【従業員満足(ES)が不十分な場合のリスク】
1. 業務への取り組み意識の低下(開発力の低下)
2. 従業員のスキルアップが見込めない(品質劣化)
3. 離職者が増える(ノウハウの流出)
4. チームワークが低下する(非効率化)
5. 企業理念や経営方針が浸透しなくなる(非推奨者の増加)
そして、これらの悪影響は社内だけではなく、大事な顧客の満足度へも影響します。
【顧客満足(CS)への影響】
1. サービスの開発力や提案力が低下(市場ニーズの変化によるかい離)
2. サービスのマンネリ化(既存顧客の離脱)
3. 担当者の入れ替わりが激しく、十分なフォローができない(埋没ニーズの発掘ができない)
4. 担当者や支店などによってサービス提供品質にばらつきがある(品質のばらつき)
5. 理念の浸透が無く企業姿勢が不明瞭であるがため不信感を抱かれる(信頼獲得の機会損失)
上記までが主に想像できるリスクです。これらの項目を見て頂ければ如何に顧客からの信頼が低下し、顧客不満足へ繋がる恐れがあるのかを理解して頂けたのではないでしょうか。
では、どの様にして従業員満足度を向上させ、インナーブランディング強化へと繋げるのか。
ここで間違えてはいけないのが、従業員満足度向上とは従業員の不平不満を解消する事ではなく「従業員が日々の業務に対し意欲的に取り組む事ができる状態になる『仕組み』や『きっかけ』を作る」という事です。つまり『1. どのような目的の下、2. 自身の業務があり、3. 何に努めれば目的へと繋がり、4. それが顧客満足となり、5. 自身の満足となるのか』という事を意識したり考える事ができる仕組みやきっかけが必要なのだと思います。
顧客満足が自身の満足へと繋がる仕組み。
そして、その事に取り組むきかっけづくり。
ここからインナーブランディングへと繋がるのではないでしょうか。
従業員満足と顧客満足というのを単純に分かる方法としてカウンター接客型の店舗(スターバックスやマクドナルドなど)を観察してみる良いと思います。
通常の飲食店ではホール接客とキッチンと役割が分かれるが、カウンター接客型ではホール担当は居ない。いわゆるセルフです。そういった点から安く良い品を提供する事が可能な半面、カウンター前とカウンター内にしか注意がいかなくなりがちで、通常の飲食店よりもホールのコンディションが悪い(椅子が揃っていない、テーブルレイアウトが悪い、フロアが汚い等)状態になってしまいやすいのです。
しかし、これまでの私の経験上では、従業員満足度の高い店舗ではまるでホールに優秀なスタッフが居るかの様に、テーブルと椅子も整然としており、ゴミ箱も溢れる事が無いしトイレも綺麗です。しかも、混雑する店舗にも関わらず席を立とうとすると「そのままで結構です」とセルフなのに後片付けをしてくれたりする。こういった気配りは視野が広くなくてはできず、従業員満足度の低い状態では後ろ向きな業務姿勢であるため、こういった気配りはできないケースが多いのが現状です。
是非、カウンター接客型店舗を訪れた際に余裕がありましたら、観察してみては如何でしょうか。
最初に結論から申し上げると「裏付けの無い顧客満足志向はリスクである」という事です。その裏付けとは何か、それこそが従業員満足であり、そこから醸成される社内の自社推奨意向、所謂インナーブランディングです。
話しを進める前に、ここでの表記にインターナル・ブランディングではなくインナーブランディングを用いている意味について解説しておきます。インナーブランディングはインターナル・ブランディングと同義ですが、その言葉から想起されるイメージの実態(インナーマッスルや体幹の様な内側を鍛えるイメージ)が社内強化という使用したい意味合いに近いため、あえてインナーブランディングとここでは言わせて頂いております。
顧客囲い込みの為のサービス拡大・・・そして失敗
顧客満足という言葉が色々なところで叫ばれる様になり、深夜まで営業時間を延長するスーパーなども多く存在する様になりました。それはとても便利になったなと思う反面、実際に足を運ぶと、提供される商品やサービス内容が少し低下した様な印象を受けたのを覚えています。これは顧客を囲い込もうとし、顧客の利便性向上に取り組んだ結果として失敗なのではないか、と個人的には思います。
そして宅配業界の再編で話題になった企業の「大量遅配問題」も記憶に新しく、ネットでも話題になった顧客満足失敗例ではないでしょうか。この企業ではサービスの拡大を大幅に図る一方、人員の大幅増員はなく、さらには宅配で競合する企業を吸収統合した際には物流システムもテストなしの本番だったとの事。
この失敗に関しては、以下の2点が主だった理由の様に見受けられます。
・要員の伴わないサービス拡大
・ぶっつけ本番のオペレーション変更
そして、お中元時期に生鮮食品も大量に流通する中、大量遅延という自体へと繋がってしまいました。当時ネットで「通常ならここで遅延を取り戻すべく昼夜問わずに走り回るのが本来」という意見が多く、その背景には急ぐ事もなく、遅くなった事も謝らず、箱もグシャグシャ、のしもグシャグシャ、という光景が数件目撃された事にありました。
言うまでもなく、ソーシャルメディア上でその状況は消費者によって報告され、そして拡散され、多くの批判が沸き起こる状態にまでなりました。
何故このような状態になったのか。それは、従業員に企業が提供するサービスが『誰のため』であり『どの様にあるべきなのか』が理解されていないからではないでしょうか。そして、その背景にはインナーブランディングが浸透していないというようにも考えられます。
少しだけ考えて頂きたいのですが、御社がこの企業の様な事態になった時、身を粉にする従業員がどれだけ居るでしょうか。
そういった存在が居るのであればとても素晴らしい事です。
そして、そのことには以下の様な事が言えるのではないでしょうか。
・元々そういった仕事への責任が教育された素養ある人材だった。
・企業理念の徹底がされており、その理念を遂行する為の現場意識が経営層にも従業員にもある。
後者なのであれば、尚素晴らしいことではないでしょうか。
ここで重要なことは『個々の仕事の姿勢をどの様にして前向きにしていくか』であり、そのことが業務の理解と自主性に繋がります。そして、その『前向きな姿勢』には従業員満足度が重要であると考えられます。
従業員満足(ES)と顧客満足(CS)の関連性
ここまででインナーブラディングの失敗例を基に、従業員満足度との関連性があるようにお話をしましたが、もっと具体的に従業員満足度が不十分な場合にどの様なリスクが考えられるのか。
まずは従業員について。
【従業員満足(ES)が不十分な場合のリスク】
1. 業務への取り組み意識の低下(開発力の低下)
2. 従業員のスキルアップが見込めない(品質劣化)
3. 離職者が増える(ノウハウの流出)
4. チームワークが低下する(非効率化)
5. 企業理念や経営方針が浸透しなくなる(非推奨者の増加)
そして、これらの悪影響は社内だけではなく、大事な顧客の満足度へも影響します。
【顧客満足(CS)への影響】
1. サービスの開発力や提案力が低下(市場ニーズの変化によるかい離)
2. サービスのマンネリ化(既存顧客の離脱)
3. 担当者の入れ替わりが激しく、十分なフォローができない(埋没ニーズの発掘ができない)
4. 担当者や支店などによってサービス提供品質にばらつきがある(品質のばらつき)
5. 理念の浸透が無く企業姿勢が不明瞭であるがため不信感を抱かれる(信頼獲得の機会損失)
従業員満足度向上からのインナーブランディング強化
上記までが主に想像できるリスクです。これらの項目を見て頂ければ如何に顧客からの信頼が低下し、顧客不満足へ繋がる恐れがあるのかを理解して頂けたのではないでしょうか。
では、どの様にして従業員満足度を向上させ、インナーブランディング強化へと繋げるのか。
ここで間違えてはいけないのが、従業員満足度向上とは従業員の不平不満を解消する事ではなく「従業員が日々の業務に対し意欲的に取り組む事ができる状態になる『仕組み』や『きっかけ』を作る」という事です。つまり『1. どのような目的の下、2. 自身の業務があり、3. 何に努めれば目的へと繋がり、4. それが顧客満足となり、5. 自身の満足となるのか』という事を意識したり考える事ができる仕組みやきっかけが必要なのだと思います。
顧客満足が自身の満足へと繋がる仕組み。
そして、その事に取り組むきかっけづくり。
ここからインナーブランディングへと繋がるのではないでしょうか。
おわりに
従業員満足と顧客満足というのを単純に分かる方法としてカウンター接客型の店舗(スターバックスやマクドナルドなど)を観察してみる良いと思います。
通常の飲食店ではホール接客とキッチンと役割が分かれるが、カウンター接客型ではホール担当は居ない。いわゆるセルフです。そういった点から安く良い品を提供する事が可能な半面、カウンター前とカウンター内にしか注意がいかなくなりがちで、通常の飲食店よりもホールのコンディションが悪い(椅子が揃っていない、テーブルレイアウトが悪い、フロアが汚い等)状態になってしまいやすいのです。
しかし、これまでの私の経験上では、従業員満足度の高い店舗ではまるでホールに優秀なスタッフが居るかの様に、テーブルと椅子も整然としており、ゴミ箱も溢れる事が無いしトイレも綺麗です。しかも、混雑する店舗にも関わらず席を立とうとすると「そのままで結構です」とセルフなのに後片付けをしてくれたりする。こういった気配りは視野が広くなくてはできず、従業員満足度の低い状態では後ろ向きな業務姿勢であるため、こういった気配りはできないケースが多いのが現状です。
是非、カウンター接客型店舗を訪れた際に余裕がありましたら、観察してみては如何でしょうか。
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