「ホスピタリティ」と「サービス」の違いと人材の関係
昨今、ブランディングの話の延長で、インナーブランディングの必要性をお話する機会が多くなってきました。その流れの中で、サービスとホスピタリティの違いについてコラムで紹介します。
私は以前、外食産業で店舗マネジメントに携わっていた経験から、今回の記事では飲食店での経験を基にした内容になっておりますが、多くの業種でご参考にして頂ける面もあるかと思います。
「アルバイトで低賃金の飲食店で良い接客をするとか馬鹿らしいよ」
こんな言葉がもし働いている側から出るのなら、完全に時間をお金で買われている状態です。そして、お店側も買っているという意識なのかもしれません。
飲食店は9割がバイト。
これを『使い捨て』と考えるか、それとも『一番の理解者であり、一番の顧客』と考えるか。決して二者択一ではありませんが、この考え方の視点の違いでだいぶ異なったお店の空気になります。
スタッフが辞めた後にも「あそこで働いて良かったな」と言ってもらえる経験を提供するのがお店の役割だと私は思いますし、そう思えるように時給以上の価値をその時間に見出す事が店員の努めでもあると思います。その為にも、飲食店はただの労働人員として考えた採用をするのではなく、普段お店に来ているお客様が「このお店で働いてみたい」と思えるようなお店づくりをしていき、そう言って頂ける方々と仕事をすることが、より良いESとCSの向上につながると考えます。(個人的には店づくりは街づくりだと思って頂きたいです。)
飲食業に限らず、マニュアルを強要し過ぎると、人の自主性は育ちません。
ところで、マニュアルとはなんでしょうか?
マニュアルとはサービスの事であり、サービスとは所謂『しなければいけない事=仕組』という事です。そこには「あのお客様のために、こんな事をすれば喜んで貰えるのでは?」というような主体性はありません。
さらに付け加えると、サービスの語源はラテン語で『奴隷』を意味する言葉です。『奴隷』はさすがに言い過ぎかもしれませんが、サービス(マニュアル)である以上は『やらされている』行為と考えます。そして、本当に作らなければならないのは『ホスピタリティ(自主的な思いやり)』が生まれる環境であり、『仕組み(マニュアル)』ではありません。『ホスピタリティから生まれる仕組み(マニュアル)』にこそ素晴らしい満足体験があり、大規模チェーン店の運営で難しいのはこういった点にあると感じます。
圧倒的に『働きたい』と思える為のブランディングが出来ていないと思います。楽しそうに働いているお店は、お客様も気持ちが良いです。「いつか一員になってみたい」そんな風に思ってもらえたら嬉しいですし、それは良い人材に巡り会うための重要な要素です。
私が採用も担当していた時は、
1. なぜこの街なのか
2. この街の良い面はなにか
3. お客様として来店した事があるのか
そういった事を聞く以外は全て雑談でした。(雑談内容が重要なのですが、そのことについては今回は触れません。)
それはその人が何故働きたいのか、その意思、目的、素養を見る為です。何故そうするのかというと、アンマッチな労働をしても時給は貰えますがそれ以上の幸せに気づく事が難しいからです。そのような状況では、お客様に対しても意欲的に尽くす姿勢が生まれないと感じていたからです。
数多くの飲食店が、スタッフが辞めた後も立ち寄ってもらえるお店であって欲しいと、心から思います。
チェーンという『ある一定の品質』を提供する仕組みは『ある一定の満足度』を常に得られる優れた仕組みだと思います。その反面、飲食業で将来独立を夢見る飲食店起業最盛期も過ぎたこの業界では、そういった仕組みに歪みが生まれているのだとも思います。チェーンという画一性(そしてサービスの標準化)を基とした仕組みの維持が、多様性の時代において難しくなってきていると感じます。
これからはチェーンのお店も地域性を用いた店舗展開(ブランドが異なるが、原価の面である程度物流面では共通性を持たせる仕組み)も選択肢の一つとして増えてくるのではないでしょうか。(そうなって欲しいという個人的な願いではありますが・・・。)
店舗で働く人の多くは、店舗付近に住んでいる人でもあるので、そういったモデルの店舗展開の方がスタッフに自主性を持ってもらう事が容易であり、その延長上にスタッフの「楽しい」があり「ホスピタリティ」があるのだと思います。
「安い時給でも良い経験だった」と言われるようなお店が増えていくと良いですね。
・9割がバイト。バイトのスタッフ次第でお店の雰囲気が大きく変わる。
・サービスは「しなければいけない事や仕組」。
・ホスピタリティは「自主性」。
・自主性を持つ人材を育てる事で、サービスは向上する。
・自主性を持つ人材の要素は「街を知っている」「街を愛している」「お店が好き」であること。
・スタッフにとって最愛のお店になると自主性が育ち、提供するサービスの質も向上する。
・これらはインナーブランディングに重要な要素である。
・最終的にはお客様へのブランディングに繋がる。
因みに、「おもてなし」を「ホスピタリティ」と同義だと考える方は多いと思いますが、私の解釈は少々違います。このことについてはまた別の機会に。
私は以前、外食産業で店舗マネジメントに携わっていた経験から、今回の記事では飲食店での経験を基にした内容になっておりますが、多くの業種でご参考にして頂ける面もあるかと思います。
「働く事」の意識と「働いて貰える」事の意識
「アルバイトで低賃金の飲食店で良い接客をするとか馬鹿らしいよ」
こんな言葉がもし働いている側から出るのなら、完全に時間をお金で買われている状態です。そして、お店側も買っているという意識なのかもしれません。
飲食店は9割がバイト。
これを『使い捨て』と考えるか、それとも『一番の理解者であり、一番の顧客』と考えるか。決して二者択一ではありませんが、この考え方の視点の違いでだいぶ異なったお店の空気になります。
スタッフが辞めた後にも「あそこで働いて良かったな」と言ってもらえる経験を提供するのがお店の役割だと私は思いますし、そう思えるように時給以上の価値をその時間に見出す事が店員の努めでもあると思います。その為にも、飲食店はただの労働人員として考えた採用をするのではなく、普段お店に来ているお客様が「このお店で働いてみたい」と思えるようなお店づくりをしていき、そう言って頂ける方々と仕事をすることが、より良いESとCSの向上につながると考えます。(個人的には店づくりは街づくりだと思って頂きたいです。)
「サービス」なのか「ホスピタリティ」なのか
飲食業に限らず、マニュアルを強要し過ぎると、人の自主性は育ちません。
ところで、マニュアルとはなんでしょうか?
マニュアルとはサービスの事であり、サービスとは所謂『しなければいけない事=仕組』という事です。そこには「あのお客様のために、こんな事をすれば喜んで貰えるのでは?」というような主体性はありません。
さらに付け加えると、サービスの語源はラテン語で『奴隷』を意味する言葉です。『奴隷』はさすがに言い過ぎかもしれませんが、サービス(マニュアル)である以上は『やらされている』行為と考えます。そして、本当に作らなければならないのは『ホスピタリティ(自主的な思いやり)』が生まれる環境であり、『仕組み(マニュアル)』ではありません。『ホスピタリティから生まれる仕組み(マニュアル)』にこそ素晴らしい満足体験があり、大規模チェーン店の運営で難しいのはこういった点にあると感じます。
多くの飲食店に足りないと思う事
圧倒的に『働きたい』と思える為のブランディングが出来ていないと思います。楽しそうに働いているお店は、お客様も気持ちが良いです。「いつか一員になってみたい」そんな風に思ってもらえたら嬉しいですし、それは良い人材に巡り会うための重要な要素です。
私が採用も担当していた時は、
1. なぜこの街なのか
2. この街の良い面はなにか
3. お客様として来店した事があるのか
そういった事を聞く以外は全て雑談でした。(雑談内容が重要なのですが、そのことについては今回は触れません。)
それはその人が何故働きたいのか、その意思、目的、素養を見る為です。何故そうするのかというと、アンマッチな労働をしても時給は貰えますがそれ以上の幸せに気づく事が難しいからです。そのような状況では、お客様に対しても意欲的に尽くす姿勢が生まれないと感じていたからです。
数多くの飲食店が、スタッフが辞めた後も立ち寄ってもらえるお店であって欲しいと、心から思います。
一定品質を提供するチェーンシステムの今後
チェーンという『ある一定の品質』を提供する仕組みは『ある一定の満足度』を常に得られる優れた仕組みだと思います。その反面、飲食業で将来独立を夢見る飲食店起業最盛期も過ぎたこの業界では、そういった仕組みに歪みが生まれているのだとも思います。チェーンという画一性(そしてサービスの標準化)を基とした仕組みの維持が、多様性の時代において難しくなってきていると感じます。
これからはチェーンのお店も地域性を用いた店舗展開(ブランドが異なるが、原価の面である程度物流面では共通性を持たせる仕組み)も選択肢の一つとして増えてくるのではないでしょうか。(そうなって欲しいという個人的な願いではありますが・・・。)
店舗で働く人の多くは、店舗付近に住んでいる人でもあるので、そういったモデルの店舗展開の方がスタッフに自主性を持ってもらう事が容易であり、その延長上にスタッフの「楽しい」があり「ホスピタリティ」があるのだと思います。
「安い時給でも良い経験だった」と言われるようなお店が増えていくと良いですね。
まとめ
・9割がバイト。バイトのスタッフ次第でお店の雰囲気が大きく変わる。
・サービスは「しなければいけない事や仕組」。
・ホスピタリティは「自主性」。
・自主性を持つ人材を育てる事で、サービスは向上する。
・自主性を持つ人材の要素は「街を知っている」「街を愛している」「お店が好き」であること。
・スタッフにとって最愛のお店になると自主性が育ち、提供するサービスの質も向上する。
・これらはインナーブランディングに重要な要素である。
・最終的にはお客様へのブランディングに繋がる。
因みに、「おもてなし」を「ホスピタリティ」と同義だと考える方は多いと思いますが、私の解釈は少々違います。このことについてはまた別の機会に。
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