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アカウント・ベースド・マーケティング(Account-Based Marketing)の理想と現実

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こんにちは、アンリです。

今回はアカウント・ベースド・マーケティング(Account-Based Marketing 以下、「ABM」)について、米国のデジタルマーケティングの最新動向と絡めてコラムに紹介します。

みなさんは、『Predictive Analytics(Predictive Marketing)=予測マーケティング』という言葉を聞いたことありますでしょうか?Marketing Automation(マーケティングオートメーション 以下、「MA」)については既に知っているかと思いますが、米国では、『Predictive Analytics』がMAの次にバズワードになりつつあります。
これは、デジタルマーケティングの目的の一つである、データから購買行動を予測しマーケティングに活用することを意味します。
Google Trends:検索キーワード ”Predictive Analytics” + エリア=”すべての国”
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マーケターの最終ゴール、つまり『質の高いリードを見つけ(Who)、その理由を付けて(Why)、タイミングを見計らって営業に渡し(When)、売りに繋げROIを高めること』に注力し始めたことがうかがえます。米国におけるこの流れは、MAではすぐに結果が出ない、または担当者がデータに溺れ成果を生み出せていないことを暗示しており、その補完・補助的なツールとして ”Predictive Marketing Platform” から〝購買に繋がる理由をデータから探り明示する動き″をキャッチする活動が活発になってきています。

このプラットフォームは、MAやCRMの前段階で3rdパーティの情報を分析することでクオリファイ(絞込み)したり、更にはMAやCRMの情報と併せ分析することで、購買に繋がる可能性がある質の高い予兆と、その理由を明示する機能などを提供しています。
そして今、MAやPredictive Analyticsなどを含むBtoBデジタルマーケティング市場の追い風となっている概念がABMです。

なぜ今、ABMなのか?


米国を中心に、なぜ今、ABMの概念が浮上しているのか、その背景を以下に整理します。

1.デジタルマーケティングに取り組んできたが成果が思わしくない


・効率:ABMはターゲットが決まっているので、必要なコンテンツやアプローチ手段が明確になり、時間やコストの削減にも繋がる
・効果:ABMは不要な企業が含まれないため成果が出やすい(増収益、一客単価平均の増加)
・戦略:マーケ部門も結果が求められており、手っ取り早く成果をあげ、役員層や営業からの評価・信頼を得てから拡張できる

2.営業が抱えるアカウント数の増加と、取り扱い製品やサービスの多様化


(=購買者の方が製品・サービスに詳しく、かつ求めるニーズのレベルも高い傾向)
・営業活動の効率化、コスト削減:デジタル情報から、ターゲット顧客ニーズを的確に捉え、事前に準備するなどの対策が打てる
※デジタル情報には、展示会などのリアルでの接点情報やコール情報、更にはアンケート情報なども含まれます。

営業パーソンなら誰しも新規開拓よりも既存のフォロー、アップセル、クロスセルの方がコストを抑えて早く成果を出せることを知っています。しかし、営業が抱えるアカウントの数、商品・サービスの多様化、および、購買者が展示会やWebサイトなどを活用して情報を集め比較検討する“購買行動が変化した時代”、営業はこれまでの嗅覚だけでは顧客のニーズに対応ができなかったり、競合に負けてしまったりという事象が発生しています。

そしてまさに今、デジタル情報という新たな武器を嗅覚に取り込む必要性に迫られています。一方、マーケ部門は、営業活動に有用な新たな武器を発見し、きちんと理由を付けて営業に渡し、成果を確認しながら改善していくことが求められています。

ここまで読んで、「すぐにABMに取り組んでみよう!」と考えるのはお薦めしません。確かに顧客を絞って、マーケティング活動のリソースを集中的に行えば、効率もよく一時的に結果は出ます。しかし、市場の動向や海外事例から飛びつくのはとても危険です。なぜなら、ABMとは、以下のように考えるのが本来の姿だからです。


本来のABMとは




ABMとは、アカウント(企業)中心主義の究極のマーケティング概念であり、
選び抜いた企業の事業目的に対し、個別の対応をしていくという、
日本語に置き換えるならば、特別なおもてなしマーケティングである


「ハードルが一段も二段もあがった」と思われる方と、「いやいやそれならずっとやっているよ」と思われた方がいるのではないでしょうか。

国内では、デジタル接点がマーケティングのタッチポイントに加わる以前から、基本的にアカウントベース型のマーケティングを実施していました。それが、飛行機や新幹線、電話や携帯・スマートフォン、emailやWebサイトなどの普及により、流通網や情報通信などのインフラが整備されたことで、商圏が広がり、商品やサービスの多様化、更にコミュニケーションの手段やスピードにも変化が生じました。

お客さまと対面で、各課題を親身に聞き、定期的に訪問や電話をするようなアナログ型のおもてなしマーケティング時代から、今ではデータを活用したデジタル型のおもてなしマーケティングの時代に変貌を遂げています。このデジタル型のおもてなしマーケティングに、流行りだけで取り掛かる前に、ABMの真意を理解していないと本当のABMの成果を生み出せないと考えています。


海外ABMの現状は・・・


現在、特に米国で流行っているABM関連(特にツールベンダー)は、先の定義とは異なり、“いかに売れそうな企業を早くリスト化して結果に繋げるか”という志向が強く、様々なシステムと繋いでデータ量が増えれば、売りに繋がる確度が上がることを前面に打ち出しているところが多く見受けられます。

一緒にゴールを見据え共に歩むスタイルではなく、これまでよりも効率的に目の前の案件を刈り取るスタイルを強調しているように感じられます。つまり、ABMの真意を置き去りにしているため、ユーザーが戦略設計やツールの活用方法、更にはABMの評価や判断を誤ってしまうのではないかと危惧しています。


ABMの真意


広義の意味
自社で選び抜いたアカウント(企業)全体を捉え、そのお客さまのゴールに向けて長期的にWin-Winの関係を構築していくモデル
具体的には、お客さまの各事業目的に対し、新規提案、クロスセルやアップセルなどのフォローを計画的に継続していきます。そのため、時間・コスト・人材・教育・体制・評価など、取り組むハードルが高くなる一方、長い目でみると両社に大きな成果をもたらすと考えられています。

狭義の意味
一事業部からスタートし、まずは中期的成果を確認してから徐々に関連事業から拡大していくというスタートアップモデル
ABMに取り組む企業は、ここから始めるのが一般的ですが、将来的に本当の意味でのABM(広義の意味)を実現するゴールをきちんと社内に浸透させておく必要があるでしょう。なぜなら、一事業部だけの成功は、アカウントベースとは言えず、お客さまのゴールに向けた新規提案、クロスセルやアップセルの機会損失を招く可能性が大いにあるからです。この意味では、“ABMごっこ”に過ぎず、企業間の関係性(絆)はまだまだだと言えます。


ABMの5つのポイント


①意識改革(社内教育):ABMの本質を知り、完全なるアカウント(企業)中心主義にスイッチする
→顧客の課題を一事業部単体ではなく全社一丸となって、アカウント全体として受け止めるマインドにスイッチする
※場合によっては社内の組織や人事制度の見直しまで必要

②ターゲット企業を絞る:双方の企業において、どんなストーリーが最も有益で将来的に有望であるか描く(Win-Winモデル)
→新規顧客ターゲットは、既存のWin-Winモデルに近い企業からピックアップする
※既存顧客および新規見込顧客の中からターゲットを選定

③キーパーソンを押さえる:継続的にコミュニケーションを取るべき相手を明確にする
→日本の意思決定はボトムアップ型の合議制が多いため、キーパーソンに繋がるメイン担当者でも可

④アライメント:自社の製品・サービスの理解、部門間の理解を深める
→特にマーケティング部門は、これまで以上に営業部門の理解と情報共有が必要
※マーケティング部門はお客さまから遠い関係であるため、お客さまのマインドを最も近くで把握している営業が持つ情報が必要

⑤長期的な計画と実行:お客さまの課題とその裏に潜む本当の目的(ゴール)に対し関係を構築する
→継続的なコミュニケーションと特別感のある関係を構築する


最後に…


ABMで大事なことは、


“売って終わりではなく、お客さまの将来を見据え、その企業のゴールまで、
うちの企業ができることはいつ何でも支援・伴走・併走します”




というあり方が本来の姿かと思います。

このようなマインドが会社全体に浸透し、実行できていることが本当のABMではないでしょうか。

【参考】ABMサービスを提供している主な米国企業


※サービス概要は各社のWebから意訳したものになります。

【Engagio】 http://www.engagio.com/
→Marketoの元共同創業者であるJon Miller氏がCEOおよび共同創業者。Engagioは、アカウント中心の分析と部門やチャネルを跨る相互作業を統合した、既存のCRMやMarketing Automationなどのソリューションを補完するaccount-based platformです。

【DEMANDBASE】 https://www.demandbase.com/
→Demandbaseは、Webサイト上で特定の企業だけに特定の(パーソナライズされた)広告を配信したり、Webメッセージを調整したりする特許技術を持ち、これらは既存のCMS、CRMやMarketing Automation、分析やチャットシステムなどと簡単に連携し、分かり易いビューを担当者に提供します。

【Terminus】 http://terminus.com/
→Terminusは、シームレスにSalesforce CRMを統合し、最適なアカウントセグメントを構築します。また、意思決定者やインフルエンサーにリーチするようアドエクスチェンジとの統合や、マーケティングとセールスのパイプラインの可視化などを提供します。

【Lattice】 http://lattice-engines.com/
→Latticeは、マーケティングおよびセールス向けにPredictive Applications(予測アプリケーション)を提供しています。これは、アカウントをスコアリングすることで、購買見込企業を可視化しリスト化し易くします。

【6sense】 https://6sense.com/
→6senseは、マーケティングやセールスチームに誰が何をいつ購入するかを100%可視化することをミッションとしています。購買社が購買プロセスのどこにいるかをデマンドジェネレーションからROIまでのプロセスで可視化します。

【Mintigo】 http://www.mintigo.com/
→Mintigoは、データドリブン型のPredictive Marketing & Sales Platformを提供しています。既存のCRMやMarketing Automationなどと連携し、購買に繋がる動機をスコアリングなどから予測しモデル化する機能などがあります。







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